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野球肩・野球肘の予防と治療(アイシング)
投球後のケアとしてのアイシングについて以前に書きましたが、今回はその3回目。
「アイシングの温度」について書いてみたいと思います。
【必要以上に冷やさない】
そんなことを言うと
「アイシングなんだから冷やすんでしょ?」
という声が聞こえてきそうですが、何事も適度な範囲があるということです。
投球後のアイシングの目的はクールダウンまたはコンディショニングですから、急性外傷のような強いアイシングは不要です。
選手によってはコンディショニングなどはひとまず置いておいて、「単に気持ち良いから」という選手もいます。
反対に「不快」という選手もいます。
*これはあくまで当院でオススメしていることですので異論もあるところだと思います。参考程度に考えて実践の中で試してみてください。
当院でアイシングの温度について気を付けている点は以下の通りです。
【氷は少なく水は多め】
一般的にアイシングでは氷のうを使うことが多いですが、その際、当院では氷は少なくして水をたっぷり入れています。
氷は2~3粒(普通の家庭用冷蔵庫のもの)しか入れません。
後はたっぷり水を入れるだけ。
要は「氷」によるアイシングではなく「冷水」によるアイシングです。
一応氷が入っているのでアイシングですが、クーリングと言った方が良いかもしれません。
氷が多いと水温は0℃近くになるため冷却効果が高くなる反面、少しやりすぎると冷えすぎるために組織代謝が低下し回復の邪魔をしてしまいます。
また翌日のダルさにもつながります。
ほとんどが水なら局所的に冷えすぎるということは起きません。
「冷水くらいで効果があるの?」
と感じられる方はぜひ試してみて欲しいと思います。
この程度の温度でも充分冷えることを実感できます。
急性外傷の応急処置としてのアイシングと投球後のケアとしてのアイシングは目的が異なります。
急性外傷のアイシングでは強い炎症や疼痛を予防するために感覚が無くなる程度に冷やします。
病院勤務時代は、手術後の患者さんなども急性外傷と同様に考えてアイシングしていました。
そのため、冷却材の温度も0℃程度のものを使いますし時間も長く20分程度は行います。
しかし、投球後の身体に起こっている損傷は「外傷」レベルの損傷とは異なり、微細な損傷が関節周囲や筋肉のいたるところに起きている状況です。
自覚症状の主なものも疲労感や火照り感です。
そんな身体状況のため、一ヶ所に集中して強いアイシングをしても効果的ではありません。
臨床的にも楽にならないのです。
熱を持っている範囲の火照りをとるような感覚で、冷水でアイシングするくらいの方が身体が楽になります。
【アイシングは2~10分程度で終了】
この冷却時間は個人差があります。
5分を1回だけ、10分を1回だけ、間隔をおいて5分を2回など、ケースバイケースです。
*短い場合は2分と書きましたが、このくらい短時間冷やしただけでも翌日が楽だと言う選手もいます。教科書的には2分でアイシングを終えることはまずありませんが、現実にはそんな場合もあります。
これでアイシング自体は終了ですが、その後は首から肩、背中、脇、腕全体、手の甲、手のひら、指などをさするようにマッサージして終えます。
加えて足腰のケアも出来れば完璧です。
そして、アイシング後はごく軽く肩や肘を動かしておきます。
*投球などではなく軽く曲げ伸ばしする程度です。
アイシングだけで終わらない方が翌日の体が楽であることが多いようです。
3回に分けてアイシングについて書いてきました。
実際には選手ひとりひとりでアイシングのやり方が違ってきますが、ひとまずアイシングの概要については一通り書いたかなと思います。
ご質問や不明点があればいつでもお問い合わせください。