鍼(はり)
鍼は当院の施術の軸です。
身体が変わる感覚。
頑固な凝りや痛みへの鍼はもちろん、それだけではない鍼のチカラを感じていただきたいと思っています。
鍼はいつから?
古くは「石」を用いたのが鍼治療の始まりと言われていますが、世界で初めて鍼が使われたのがいつなのかは諸説ありよく分かっていません。
もしかしたら当時の鍼治療は石ではなく木や竹などであったかもしれませんが、現存する古代の遺物から推測するしかないため確かなことはわかりません。
日本では、600年代には鍼治療が行われていたようです。
日本最古の医学書とされる『医心方』。そこには様々な治療法とともに鍼治療にかなりの量を割いて書かれています。
鍼や灸という治療が行われるようになった時代にやっていたことと現代で行われる鍼灸は同じ部分も違う部分もあります。
よくわかっていない部分もあります。
時の流れの中で失われてしまったことがあるかもしれませんし、鍼灸師も気づかないまま引き継がれているかもしれません。
鍼灸の歴史はわからないことがたくさんあります。
研究で得られる新たな情報や知見を取り入れつつ、かつての鍼灸の姿を考えながら自分の鍼灸を深めていくのもまた面白いと思っています。
現代の鍼は?
現在では、中国、韓国、日本などアジア圏だけでなく、世界中で鍼灸が行われるようになりました。
それは、様々な視点で鍼が研究されるようになったということでもあり、これから発展していく可能性の高まりも感じます。
様々な国で行われている鍼施術ですが、使用される鍼はどの国でもそれほど大きくは違いません。
中国でしか使わない鍼や日本でしか使わない鍼もありますが。
それぞれに特色がありますが、どの国でもステンレス製の鍼が最も多く用いられています。
当院で用いている鍼もステンレス製が中心です。
他には、金、銀、銅、鉄、真鍮、アルミニウム、プラチナ、チタン、樹脂などから作られた鍼もあります。
変わった使い方をする鍼ですが割と知られている鍼の一つに円皮鍼(えんぴしん)と呼ばれる鍼があります。
置き鍼(おきばり)という呼び名のほうが知られているかもしれません。
長さ1ミリに満たないほど極小の鍼を、テープで皮膚に貼り付けて使います。
当院ではセルフケアによく処方しています。
その他、鑱鍼(ざんしん)、圓鍼(えんしん)、鍉鍼(てい鍼)と呼ばれるような現代では「刺さない」鍼として知られているものもあります。こちらは、一般的にはあまり知られていないかもしれません。
本来はそれぞれの鍼に用途や目的がありますが、刺さない形で用いるような鍼は一般的な鍼が不安という方に用いることもあります。
鍼のほとんどは機械化された工場で製品化されますが、現代でも職人さんが一本一本作る鍼があります。
優れた職人さんが作るものは他では代用が利きません。
本当に有難いことだと思います。
鍼ってどうやるの?
鍼施術は「鍼をうつ」「鍼をふれさせる」ことを通して身体を変え、様々な症状・状況・体質などにアプローチしていきます。
鍼を用いた瞬間から身体は変わっていきます。
ただし、鍼施術には世界共通の「これが鍼!」というような決まった型はありません。
鍼施術は「鍼を用いる」ということしか共通点が無いと言っても良いほどに多様です。
はり師によって、また患者さんの体質・症状などにより、用いる鍼の種類、鍼の打ち方、鍼を打つ場所、施術時間など様々です。
同じ人への鍼施術だとしても、毎回同じ内容になることはまずありません。
その場その時で症状も体も変化しています。
それに合わせて鍼の用い方も変わります。
鍼って痛いの?
様々な鍼施術の手法がありますが、当院で行う鍼施術はできるだけ痛みを出さないように注意深く行っています。
また、鍼施術には「ひびき」と言われる独特な感覚が伴うことがあります。
グーッとくる感じ
ジーンとする感じ
スーッとする感じ
などなど。
ひびきの反応は様々ですし、人によって表現の仕方もいろいろです。
そういう鍼のひびきは調整ができますので、確認しながら施術をすすめていきます。
鍼施術はどんな効果があるの?
◉筋骨格への作用
◉免疫への作用
◉自律神経への作用
◉体液循環への作用
◉内分泌への作用
などが鍼の作用として言われているところです。
具体的には、血液循環を促進したり筋肉の硬さがやわらぐといったものはよく知られているところかと思います。
ツボ・経穴・奇穴
鍼施術ではツボの作用が重要だと当院では考えています。
ツボは腧穴(しゅけつ)や孔穴(こうけつ)などと呼ばれていて、特定のルート上にある経穴(けいけつ)とそれとは別の基準である奇穴(きけつ)に分けられます。
例えばですが、
・腰痛には◯◯(例えば後渓、中渚など)
・肩凝りには◯◯(例えば百会、天井など)
・五十肩には◯◯(例えば少沢、三間など)
・喘息には◯◯(例えば魚際、孔最など)
・花粉症には◯◯(例えば太陽、太衝など)
・生理痛には◯◯(例えば関衝、復溜など)
・皮膚炎には◯◯(例えば少府、風市など)
・逆子には◯◯(例えば三陰交、至陰など)
などと言われたりもします。
ツボの研究報告は数え切れないほどありますが、なぜそこにツボがあるのか、ツボがどう作用しているのかというような根本的なメカニズムはまだ解明されていません。
研究が進みつつはありますが。
現実に鍼灸施術でツボと毎日向きあっていると、鍼灸師ながらその奥深さに驚くことが多々あります。
ツボに鍼灸施術を行った場合のホルモン分泌や血流量の変化、自律神経の反応、筋肉や筋力の変化などを研究した論文は多数あります。
しかし、まだまだ謎の多い分野なのです。
だからこそ面白い分野でもあります。
実は、それぞれのツボの作用を全く知らなくても鍼灸施術はできます。
ツボという概念を全く無視して行う鍼灸施術の考え方もありますし、当院でもそういう方針で施術を行うことがあります。
しかし、、、
様々な不調や変化が現れるツボ
ツボを介してみえてくる身体のつながり
それは、とても奥深く、鍼灸施術に不可欠なものだと私は感じています。
他の施術との組み合わせ
鍼施術単独で行うこともありますし、他に灸やカッピング(吸玉)、徒手療法などを加えて施術を組むこともあります。
これは、当院独自とか現代だからというわけではなく、古代からそういうものなのです。
鍼が良いのか、灸が良いのか、あるいは体操、運動、食事療法、心理療法などが良いのか。
その場、その時、その人に合わせて考えられてきました。
これは、西洋だろうと東洋だろうと、どの国だろうと関係ありません。
その人にとって何が必要でどうすればよいのかを考えて実行していくことは全ての医療に共通することです。
いま必要としていることを行う。
当たり前のことですが、これが一番大切なことだと考えています。
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