お灸(きゅう・やいと)

お灸が主役の治療、鍼や手技療法などの最高の脇役としてのお灸治療、また日々のセルフケアとして、、、お灸の活躍の場は様々です。

 

そんなお灸が私は大好きです。

 

 お灸と台座灸

 

 

【お灸ってなに?】

お灸(おきゅう)は、蓬(よもぎ)の葉を原料として作られる艾(もぐさ)を使った、日本に古くからある治療法です。

 

おきゅう、きゅう、やいと。

 

呼び名は地域によって変わります。

 

 

艾を燃焼させることでツボに熱刺激を与え、病気を治療または予防したり、日頃の養生をするために用いられています。

 

 

【お灸って熱いの?】

お灸にはいくつも手法(やり方)があります。

 

温かいな~という程度の温感のお灸もあれば、しっかりとお灸の熱を身体にとおす熱感のあるものまでお灸のやり方は様々です。

 

 

基本的には、お灸に使う艾(もぐさ)の精製度、艾のひねり方、指で行う温度調整などにより、お灸で感じる熱感を微調整しています。

 

お灸のすえ方や目的などによりお灸に使う艾(もぐさ)も違いますが、この艾の精製度によっても温度が変わります。

 

艾のひねり方によっても温度が変わります。

 

そして、最終的には指で熱が体に伝わるスピードや量を調整することで温度や熱感が変わります。

 

 

この熱量の調整は、お一人お一人の感受性や治療目的などにより決めていきます。

 

また、セルフケア用品として薬局などで購入できる台座灸は、各メーカーから様々な温度(温感)のものが販売されています。

 

 

当院で用いるお灸の割合を大まかに分けると、温かい程度の温感のお灸が8割、熱感が強いタイプのお灸が2割です。

 

*熱感が強いお灸は、ご希望の方のみ行っております。

*艾(もぐさ)…ヨモギの葉を精製したものです。

 

 

【お灸と日本人】

日本では、古来より暮らしの中でお灸が行われてきました。

 

治療としても、セルフケア、日常の養生としても幅広くお灸が活用されています。

 

 

調合してもらった薬を飲んだりするのと違って「〇〇というツボが〇〇という症状に効く」というようなツボ療法としてのお灸であればご家庭でも取り組みやすいですからね。

 

しかも艾さえあれば出来るためとっても低コスト

 

松尾芭蕉をはじめ、お灸(艾)がかつての日本人の旅のお供だったのもうなずけます。

 

 

*私が泊まりがけで出かける時は、お守り代わりに数本の鍼とひとつまみの艾を持って出かけます。

 

 

現代では、「お灸」と聞いてどんなものかすぐお分かりになる方は少ないかもしれません。

 

私は田舎暮らしだったこともあり、私が子どもの頃は自宅でお灸をすえる方もけっこういらっしゃいました。

 

 

また、今では使われることが少なくなりましたが「叱る」とか「こらしめる」という意味で「お灸をすえる」という表現もよく使われていました。

 

実際に、子どもが叱られる時に本物のお灸をすえられることもありました。

 

その時はもちろんペナルティとしてお灸をすえるのですが、これにはペナルティだけでなく治療という側面もあります。

 

現代でも、子どもの疳の虫(かんのむし)などに対して鍼やお灸をすることがあります。

 

子どものお灸治療は2ヶ所(身柱や命門と呼ばれるツボ)のお灸でどうにかなる、なんて言われることもあります。

 

そんなお灸は日常のものでした。

 

 

昔は昔、今は今。

 

確かにそうです。

 

ただ、鍼灸に限らず古くから続く東洋医学的な療法には先人達が積み上げてきたものがたくさんあります。

 

 

時代が変わっても、変わらないものもあります。

 

 

それを大切に心に留め、歩みは止めず、お灸をすえていきたいと思います。

 

 

【お灸と日本の風土】

日々の暮らしの中で用いられていたお灸は、今でも薬局で簡易型のお灸(せんねん灸など)が販売されています。

 

「鍼灸院に行ったことはないけどお灸はしたことがある」

 

そんな方も結構いらっしゃいます。

 

 

*艾そのものも販売されていますが、これを購入されるのはよほどお灸に慣れた方ですね。

 

 

お灸が暮らしの中に根づいたのは、現代のような薬品や手術などの医療技術が開発されていなかったということもありますが、それ以上に日本の気候風土日本人の体質お灸が合っているということも関係していると考えられています。

 

だからこそ、現代まで続いているのだと思います。

 

医療でもあり、文化でもある。

 

それがお灸です。

 

 

日本には春夏秋冬という四季の移り変わりがあり、梅雨から夏にかけて極端に湿度が高く蒸し暑いが雨が降ると意外に冷える、秋から冬にかけて極端に湿度が低く雪が降るほど冷える。

 

四季というのは単純に暖かいとか寒いとかということだけではありません。

 

いくら建築物やエアコンが発展しようとも、人と自然は切り離せないものです。

 

 

こんな日本の風土の中で出てくる体調不良には、火のチカラを活かしたお灸という手法はよく合うことが多いのです。

 

また、四季や天候に関係なく冷えたり、水分代謝がスムーズでない方にもお灸がよく合います。

 

 

日本人は胃腸を悪くすることが多いと言われたりもしますが、人間の身体の中心はハラにあり、治療をする際のベースにもなっています

 

湿をとり胃腸の働きを整えたり血液循環を改善するお灸は現代でも非常に有効な治療法なのです。

 

 

ちなみに、私自身、自分の日常の体調管理に鍼・お灸・体操(のようなもの)を行っていますが、梅雨時期や冬場はお灸が大活躍しています。

 

 

【今、なぜお灸なの?】

お灸と言うと、古くさく感じる方もいらっしゃると思います。

 

実際にお灸の歴史は古いですから、そう感じて当然です。

 

 

お灸のすえ方の判断やツボの選び方は経験によるところも大きいですし、先人達の経験が書籍や文献にも残されています。

 

しかも、使うものは古代からある「艾と線香」です。

 

鍼灸師の私が言うのもなんですが、古くさい治療です。

 

 

そんなことも影響してか、残念ながら鍼灸院でも「お灸はしない」治療院が増えています。

 

ビルテナントなどでは「火気厳禁」のところもあるので、仕方ない面もあるのかもしれません。

 

 

しかし、お灸には鍼やマッサージには無い、独特の効果・気持ち良さがあります。

 

もちろん鍼には鍼の、マッサージにはマッサージの気持ち良さがありますけどね。

 

お灸が合う体質の方や冷えている方は、ちょっと刺激の強い熱いお灸をすえても「気持ちいい」とおっしゃいます。

 

 

治療も適材適所です。

 

当院では、アレルギー症状、冷え性、不妊症、逆子、生理痛、婦人科系疾患、産前産後のトラブル、慢性腰痛、難治性の疾患などの方に良く用いています。

 

 

人間は、火というものを生活の中に根付かせてきました。

 

その火のチカラを治療に活かしたものがお灸です。

 

偶然の賜物かもしれませんが、よくぞ気づき思いついたと感じざるをえません。

 

 

たかがお灸、されどお灸です。

 

 

そんなお灸の底力を感じていただければ幸いです。

 

 

お灸の効果を科学的に立証した論文も多々ありますし、それはもちろん参考にはしています。

 

〇〇というツボにお灸をすえると〇〇の効果がある、といったものです。

 

でも、どんなに研究が進んでも、やはりお灸は原始的な治療なんです。

 

私はそう思います。

 

 

体を呼び起こす。

 

 

そんな感覚です。

 

科学・医学が発達したご時世に「感覚」なんて言って申し訳ないのですが、鍼灸や按摩、マッサージなど古来からある治療法は、施術する側も施術を受ける側も「感覚」という要素が最も重要になります。

 

 

【お灸でセルフケア】

治療院で行うお灸は治療を目的として行うお灸。

 

そのため

 

「なんか難しそう」

 

と感じられるかもしれません。

 

 

でも本当は、、、お灸は難しいものではありません。

 

理屈を知らなくても、誰でも、日常のセルフケアとしてお灸を取り入れることが出来ます。

 

 

私は、セルフケアは好きな方法でやるのをおすすめしています。

 

 

自分で自分のケアをするのに善し悪しはありません。

 

運動でもヨガでも何でもよくて、何もお灸じゃなくてもかまいません。

 

好きなことじゃないと続きません。

 

大切なのは「自分でやること」ですからね。

 

 

ただ、もしも「お灸が好き」「お灸を試してみたい」と思われているなら遠慮なくご相談ください。

 

体質や症状をみながら、どこに・どのくらいお灸をすれば良いのかアドバイスさせていただきます。

 

 

【お灸と艾】

お灸に使うのは艾(もぐさ)

 

これが無ければ始まりません。

 

 

艾とは、ヨモギ(ヨモギ餅に使う河原の土手などに生えているアレです)の葉を精製したものです。

 

それを1年〜数年寝かせたものがお灸の艾として使われます。

 

 

精製度合いが低いものや寝かせる年数が短いものも使われていますが、一般に煙が強いためお灸を多用する当院では採用していません。

 

*煙が強い艾が「低品質な艾」というわけではありません。そういうタイプの艾は熱量が大きいため、灸頭鍼や棒灸などと相性が良いです。使いようです。

 

 

余談ですが

 

艾は、精製度合や寝かせた年数、生産国などによって使い心地や金額が大きく違ってきます。

 

もちろん使う側の好みもありますけどね。

 

 

また、各艾メーカーの艾の精製過程は門外不出です。

 

それぞれのメーカーにも職人さんがおり、その技に支えられている艾を使うことができるのはとても有難いことです。

 

 

当院で使っている艾は、亀屋左京商店ウチダ和漢薬の純国産艾です。

 

国産艾は、ヨモギ生産者の方々の高齢化などもあり生産量が減少していると聞いています。

 

良い艾を末永く使いたいと思う今日この頃です。

 

 

【お灸の種類】

実際のお灸にはいくつも手法があります。

 

当院で行っているお灸をご紹介いたします。

 

 

 

●台座灸(だいざきゅう)

薬局で市販されている「せんねん灸」タイプです。

 

ほとんどの商品が温度の強弱温感の持続時間により感じる温感が異なります。

 

形は、シールがついた特殊な厚紙の上にお灸をすえるような形になっています。

 

シールで貼り付けて使うため誰でも簡単に使えますし、ヤケドの心配がないというのも大きなメリットです。

 

 

簡易的にお灸の効果を実感できるセルフケアグッズとしても有用で、特に、花粉症などのアレルギー性鼻炎、逆子、不妊症、冷え性、むくみ、不眠、消化不良、血行不良、生理痛、自律神経症状、その他婦人科症状や慢性症状などのセルフケアに最適です。

*当院では温感を長く持続できる無煙タイプのものを使っており、温度により3種類の台座灸を使い分けています。

 

 

 

●透熱灸(とうねつきゅう)

艾から直径0.5~1ミリほどの艾をひねり出しお灸をすえます。

 

艾の精製度合いも関係しますが、主に艾のひねり方によって温度を調整します。

 

 

皮膚の上に直接行うお灸ですが指先で熱量を調整するため思ったほど熱くは感じません。

 

すえ方によって違いますし、人それぞれの感じ方なので表現しにくいですが、ピリッとかキュッとする感じで人によっては温かい程度しか感じない場合もあります。

 

*当院では水ぶくれが出来ないようにお灸をすえています。

 

 

1ミリという小さなお灸ですが、お灸という火のチカラを活かす治療の効果を実感していただけるお灸です。

 

*場合により、熱感調整のために専用のアルミシートを使います。

 

 

 

●八分灸(はちぶきゅう)

見た目は透熱灸と同じような感じがしますが、お灸に点火して八割ほど進んだところで消す、または取り払ってしまいます。

 

そのため、一瞬熱い感覚はありますがヤケドの心配はありません

 

 

透熱灸はちょっとね、、、という方でもこの灸法なら安心して受けていただけます。

 

当院でも出番の多い灸法です。

 

 

 

●知熱灸(ちねつきゅう)

すえ方は八分灸に似ていますが、通常行われている知熱灸はお灸そのもののサイズが違います。

 

また、熱感は八分灸よりも更にマイルドです。

 

 

ツボやお体の状態で多少変わりますが、概ね小指から親指の爪くらいの大きさのお灸で透熱灸や八分灸より大きめなことが多いです。

 

温かさを感じた時点でお灸を取り払うため、ヤケドの心配はありません

 

 

 

●糸状灸(しじょうきゅう)

糸のように細いお灸で透熱灸の一種です。

 

直径0.5ミリほどのお灸で、ピンポイントにしっかり熱を通したい場合に用います。

 

 

表現が難しいですが「ツーンとした熱さ」という感覚です。

 

当院では頭にあるツボや指にある井穴というツボに使うことがあります。

 

 

 

●隔物灸(かくぶつきゅう)

ショウガ和紙などの敷いた上にお灸をすえる灸法です。

 

皮膚とお灸の間をショウガや和紙、アルミシートなどで隔てているので隔物灸と呼ばれています。

 

一般的には、ショウガ灸ビワの葉灸などの名前の方が知られているかもしれません。

 

 

生ショウガ、水に浸した和紙を使用する場合は、湿熱(湿気のある熱)を利用したお灸となります。

 

ジワーっとした温感が特徴です。

 

 

 

●棒灸(ぼうきゅう)

艾を紙の筒に詰め込んで、直径2センチ程度の艾の棒を作ります。

 

その棒に火を着けたものを、ツボに近づけたり離したりしながら温熱刺激を加えます。

 

 

また、専用の器具を使い棒を固定し、持続的に温熱刺激を加えていく手法もあります。

 

基本的な使用方法さえ守れば誰が行っても火傷しないため、セルフケアに使われることも多くあります。

 

 

台座灸などと比べると煙が多いのが欠点ですが、その点をカバーできる煙が出ない炭火タイプのものもあります。

 

*現在、当院では行っておりません。

 

 

 

●灸頭鍼(きゅうとうしん)

鍼とお灸の合わせ技で、まず鍼を打ち、その鍼の頭に艾を付けたものが灸頭鍼です。

 

皮膚から艾が離れていますので、艾の遠赤外線で広範囲に熱を加えることができます。

 

 

フワ〜っとした温かさがあります。

 

また、灸頭鍼の少し変わった手法としてあえて温感を出さない方法もあります。

 

当院では、主に慢性腰痛、足腰腹の冷え、むくみ・だるさ、膝の痛みなどがある方に用いることが多いです。 

 

 

*この他に打膿灸焦灼灸箱灸などの灸法もありますが、当院では行っておりませんので割愛致します。

 

 

【日本のお灸、世界のお灸】

日本ではお灸が多様化し現代まで続いています。

 

お灸の大きさだけでも、ゴマ粒くらいのお灸から栗大まで。

 

 

日本よりはるかに昔から現代まで鍼がさかんに行われている中国では、お灸より鍼治療やカッピングの割合が高いです。

 

ただ、近年は美容目的でのお灸の利用なども増えていますので、この先はまた変わってくるかもしれません。

 

そんな中国や韓国のお灸は、日本に比べて豪快な手法が多いです。

 

これには風土や医療保険制度、施設環境(日本のテナントでは煙が沢山でる豪快なお灸は難しい)など様々なことが影響していると思われます。

 

 

ちょっと自虐的に言えば

 

「ゴマ粒」とか「米粒」くらいの小さな小さなお灸をすえることが多い日本でのお灸事情。

 

そんな小さなお灸での大きな効果を求める、極めようとする。

 

きっと、性質といいますか性格といいますか、そういうところが日本人らしさなんだと思います(笑)

 

 

【モクサアフリカの活動】

海外でのお灸治療として、ぜひ皆様に知っていただきたい活動があります。

 

それが、2008年からモクサアフリカという団体(本部:イギリス)が行っているお灸の治療・研究活動です。

 

モクサは艾です。(艾の英語訳はmoxa

 

 

アフリカでは結核が猛威をふるっています。

 

結核治療は、薬剤への抵抗性を持つ耐性菌への対応として、通常いくつもの抗生物質を組み合わせて治療を行います。

 

その結果、更なる耐性菌が生まれ、治療はどんどん長引いてしまうという悪循環も起こっています。

 

 

これはアフリカに限らず、世界共通の問題です。

 

また、結核では、関節痛などの症状も現れ、日常生活が著しく障害されます。

 

 

そこで立ち上がった数名の鍼灸師が起こしたのがモクサアフリカのお灸活動です。

 

実際にお灸を結核の補助治療として役立てること、またその研究を行っています。

 

その成果も出ており、排菌時間の短縮関節痛の軽減が出来ることが立証されています。

 

 

この活動は、アフリカだけでなくケニアなどにも広がりをみせています。

 

 

結核は未だに感染者も多く、治療期間も長期間に及ぶ疾患です。

 

日本では過去の病気のように思われているところもありますが、世界でも3分の1、日本でも15%の方が結核に感染していると言われています。

 

また、耐性菌の問題や、かつてのような結核に詳しい専門医が減っていることも問題となっています。

 

 

一鍼灸師の私に出来ることは多くはありませんが、身近な問題として行動していかなくてはいけないことだと肝に命じています。