灸(きゅう)

古くから日本で親しまれてきた灸。

灸熱が身体にしみる感覚と体と心を元気にする灸の効果を感じていただければ幸いです。

 

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お灸ってなに?

灸は、蓬(よもぎ)の葉を原料として作られる艾(もぐさ)を使った、日本に古くからある療法です。

おきゅう、きゅう、やいと。

呼び名は地域によっても変わります。

 

 

 

蓬と艾

蓬…よもぎ

艾…もぐさ

よもぎ餅を作る時のヨモギと同じです。

 

ヨモギは食用にも薬用にもなるとても便利なもの。

でも、どこでも見られるようなごく一般的な「草」です。

多摩川の河川敷に行ってみると、そこかしこにヨモギが生えています。

 

よもぎ餅を作る和菓子職人さんに情熱があるように、モグサを作る職人さんにも情熱があります。

ヨモギを摘み、乾燥させ、精製して作るモグサ。

相当な時間と手間がかかります。

そんな貴重なモグサを有り難く使わせていただいています。

 

 

 

お灸って熱いの?

灸には様々な手法があります。

ほとんど温感を感じない灸、じわ~とあたたかい程度の灸、しっかりと灸の熱を身体にとおす熱感のある灸。

灸のバリエーションは多様です。

 

一般に、灸の種類、灸に使うモグサの精製度、モグサのひねり方、指先で行う酸素量の調節などにより、灸で感じる熱感を微調整しています。

モグサの精製度やモグサのひねり方によっても温度が変わり、最終的には指などで熱が体に伝わるスピードや量を調整することで温度や熱感が変わります。

 

 

 

お灸と日本人

日本では、古来より日々の暮らしの中で灸が行われてきました。

現代のように皆保険制度が無かった時代、調合してもらった高価な薬を飲んだりするのと違い、ツボ療法としての灸であれば家庭でも取り組みやすかったという説もあります。

薬師や医師が調合する専門薬に比べ、とっても低コストなモグサを使うことも灸が日本に広まった理由の一つかもしれません。

 

現代では、「灸」と聞いてどんなものかすぐお分かりになる方は少ないかもしれません。

 

私は上京するまで鳥取県の山の中で暮らしていたこともあり、私が子どもの頃は自宅で灸をすえる方がけっこういらっしゃいました。

私の曾祖母もその一人。

私の実家では、灸を「やいと」と呼びます。

私にとっても灸は身近なものでした。

 

近年ではさすがに少なくなりましたが、今でも、健康のために決まった日に疳の虫、喘息、慢性的な消化不良などへの施術や予防を目的として灸をする文化が根づいている地域が日本にはあります。

灸はそんな存在、灸は日常のものでした。

 

鍼灸に限らず、古くから続いていることには先人達が積み上げてきたものがたくさんあります。

それを大切に心に留め、歩みは止めず、鍼灸と関わっていきたいと思います。

 

 

 

お灸と日本の風土

日々の暮らしの中で用いられていた灸は、今でも薬局で簡易型の灸が販売され幅広い世代に利用されています。

あ、簡易型と言ってもバカにできないんですよ。

うまく使えばセルフケアでもしっかり効きます。

 

灸が日本の暮らしの中に根づいたのは、当時は現代のような薬品や手術などの医療技術が開発されていなかったということもありますが、それ以上に日本の気候風土や日本人の気質にお灸が合っていたのではないかとも言われています。

 

日本には春夏秋冬という四季の移り変わりがあります。

冬から春にかけては寒暖差が大きく身体も大きく揺らぎます。

梅雨から夏にかけては極端に湿度が高く蒸し暑いのに雨が降るとぐっと冷えます。

夏から秋にかけては台風など天候気圧の変化が大きく、寒暖差もあり体調にも影響します。

秋から冬にかけて極端に湿度が低くなり、雪が降るほど冷える地域もあります。

 

気密性の高い建築物や高機能エアコンなどの登場により生活がどれだけ便利になっても、人と自然は切り離せないものです。

こんな日本の風土の中で出てくる体調不良を整えるには、火のチカラを活かした灸がぴったりだと日々感じます。

 

 

 

今、なぜお灸なの?

灸と言うと、古くさく感じる方がいらっしゃるかもしれません。

実際に灸の歴史は古いですから、そう感じて当然です。

しかも、使うものは古代から相変わらずモグサ。

 

鍼灸師の私が言うのもなんですが、古くさい方法なのかもしれません。

 

そんなことが影響したのかどうかわかりませんが、残念ながら鍼灸院でも「灸はしない」ところが増えています。

ビルテナントなどでは「火気厳禁」「煙厳禁」のところが増えているので仕方ない面もあります。

 

しかし、鍼には鍼の、マッサージにはマッサージの、灸には灸の、それぞれの良さがあります。

 

火のチカラを健康に活かしたものが灸。

そんな灸の底力を感じていただければ幸いです。

 

 

 

お灸でセルフケア

鍼灸院で行う灸は症状や体質によってやり方も変わります。

鍼灸師によっても様々か考えがあります。

 

そう聞くと、灸を自分でやるのは難しそうだと感じられるかもしれません。

でも灸は決して難しいものではありません。

理屈を知らなくても、誰でも、日常のセルフケアとして灸を取り入れることが出来ます。

 

私は、セルフケアは好きな方法でやるのをおすすめしています。

運動でもヨガでも何でもよくて、何も灸じゃなくてもかまいません。

好きなことじゃないと続きません。

 

当たり前ですが、大切なのは「継続して自分でやること」です。

セルフケアというよりセルフマネジメント。

もしも「お灸が好き」「灸を試してみたい」と思われているならお近くの鍼灸院で相談してみると良いと思います。

 

 

 

お灸と艾

灸に使うのはモグサ。

これが無ければ始まりません。

 

モグサは、よもぎ(よもぎ餅に使う河原の土手などに生えているアレです)の葉を精製したものです。

それを1年〜数年間、土蔵などで寝かせたものが灸のモグサとして使われます。

 

ちなみに、各艾メーカーのモグサの精製過程は企業秘密であることが多いようです。

それぞれのメーカーに職人さんがおり、その技に支えられているモグサを使うことができるのはとても有難いことです。

ヨモギ生産者やモグサ製造の職人さんの高齢化が言われる近年ですが、良いモグサを末永く使いたいと思う今日この頃です。

 

 

 

お灸の種類

お灸にはいくつも手法がありますが、代表的なものを紹介します。

 

◉透熱灸(とうねつきゅう)

モグサのかたまりから直径0.5~1mmほどのモグサをひねり出し灸をすえます。

モグサの精製度合いも関係しますが、主にモグサのひねり方と指先の使い方によって温度を調整します。

皮膚の上に直接行う灸ですが、指先で熱量を調整するため思ったほど熱くは感じません。

人それぞれの感じ方なので表現しにくいですが、少しピリッとする感じです。

指で熱を緩和する方法を用いたり、身体が冷えている人では何となく温かい程度しか感じない場合もあります。

 

◉八分灸(はちぶきゅう)

見た目は透熱灸と同じですが、灸に点火して8割程度進んだところで消す、または取り払ってしまいます。

そのため、ほんの一瞬だけ熱感覚がありますがヤケドの心配はありません。

透熱灸はちょっと、、、という方でもこの灸法なら安心して受けていただけます。

 

◉知熱灸(ちねつきゅう)

すえ方は八分灸に似ていますが、通常行われている知熱灸は灸そのもののサイズが大きいことが多いです。

ツボやお体の状態で多少変わりますが、概ね小指から親指の爪くらいの大きさの灸で透熱灸や八分灸より大きめです。

八分灸と同じく、温かさを感じた時点で灸を取り払うためヤケドの心配はありません。

 

◉糸状灸(しじょうきゅう)

文字通り糸のように細い灸で透熱灸の一種です。

直径0.5mmほどの灸で、ピンポイントにしっかり熱を通したい場合に用いる灸です。

表現が難しいですが「ツーンとした熱さ」という感じです。

 

◉台座灸(だいざきゅう)

厚紙で作られた台紙の上に艾が載せられているタイプの灸です。

薬局で市販されているお灸は、ほとんどこのタイプで、台紙の厚さや艾の質や量などを変えることで製品ごとに異なる温度設定がされています。

火傷防止と温感を長く伝えることが誰でも簡単にできるのがメリットです。

 

◉棒灸(ぼうきゅう)

モグサを紙の筒に詰め込んで直径0.5〜1cm程度のモグサの棒を作り、その棒をツボに近づけたり離したりしながら温熱刺激を加える手法です。

熱量と範囲を調整しやすいことがメリットです。

当院ではモグサを炭に加工した微煙または無煙の棒灸を使っています。

 

◉灸頭鍼(きゅうとうしん)

鍼と灸の合わせ技のような手法で、まず鍼を打ち、その鍼の頭に艾を付けたものが灸頭鍼です。

皮膚からモグサが離れているため比較的広範囲に熱を作用させることができます。

 

 

 

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