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2016 / 06 / 13  06:44

アイシングをしないという選択

仲間とアイシングの話をするとよく出てくる話題があります。

 

それは山本昌投手のこと。

 

今日はそのことを書いてみます。

 

 

 

【鉄腕 山本昌投手】

昨年50歳でプロ野球引退をした山本昌投手。

高校卒業とともに中日ドラゴンズ入団。

1988年に初勝利をあげ2015年に中日を引退するまで、沢村賞、3度の最多勝、41歳でノーヒットノーランなど結果を残し続けました。

通算219勝、防御率3.45。

その投球術にはたびたび感動させられました。

本当に素晴らしい投手だと思います。

 

 

 

【アイシングをしない投手】

そんな山本投手ですが、超一流の投手であると同時にアイシングをしない投手として有名です。

ご本人が様々な場面で何度もアイシングはしないということを言われています。

野球ファンでなくとも聞いたことがある人がいらっしゃるかも。

 

山本投手の他にもアイシングをしないプロ投手は世界中にいます。

2013年に生涯ヤンキースとして引退したクローザーとして超有名なマリアノ・リベラ投手アイシングをしなかったようです。

絶妙なコントロールとカットボール主体の投球で652セーブという驚異的な数字を残している鉄腕投手です。

山本投手は生涯ドラゴンズ、リベラ投手は生涯ヤンキース。

 

ちなみに、リベラ投手も山本投手もプロになってしばらくはアイシングをしていた時期があるようです。

試合後はほとんどのチームやトレーナーがアイシング指示を出しますからね。

山本投手はアイシングすると肩が重く感じたため20代の頃には止めたようです。

リベラ投手についてはよく分かりませんが、当初はトレーナーの指示通りアイシングをしていたようです。

その後、肘の痛みが悪化し最終的に肘のクリーニング手術を受けています。

あくまで推測ですが、「アイシングをしても肘の問題が出た」という一つの結果を経験したことでアイシングへの信頼感を無くし、アイシングを止めたのかもしれません。

 

 

 

【アイシングと故障の関係】

アイシング単独のケアでは肩や肘の傷害を予防することはできません。

アイシングは数あるケアの中のひとつ。

それ以上でもそれ以下でもなく、アイシング至上主義のような神話めいた説を信じすぎないことです。

私のこれまでの経験でも同様に感じます。

 

アイシングは「傷める要素のひとつ」を対象として行うケアです。

 

炎症は運動すれば必ず起きます。

関節や靭帯、筋肉、筋膜などに軽い炎症は必ず起きています。

それが強くなりすぎないようにコントロールしようとする手段の一つがアイシングです。

 

アイシングはあくまでケアの一手段であり、やるべきことは他にもたくさんあります。

フォームチェック、ストレッチ、エクササイズ、食事、トレーニングの在り方、、、

選手個々に違うでしょう。

 

今でもアイシング至上主義のトレーナーがいるかは疑問ですが、他のケアを全くせずにアイシングだけに重きを置く考えは非常に危険です。

また、アイシングに限らず、選手は個々に体質が違いますしケアへの考え方もその方法も違います。

もともとの身体の柔軟性も異なりますし、食事の好みも食べられる量も異なります。

それが子供なら成長の個人差もあります。

それは身体の傷めかたも回復の仕方も異なるということでもあり、ケアのやり方や考え方も異なってくるということです。

 

アイシングをしないという選択肢もあるし、実際にそういう選手もいる。

山本投手やリベラ投手は「しない」選択をしたということです。

 

 

 

【当院のアイシングケア】

私自身は、選手が自分なりのケアをしていて実際にそれで効果が出ていれば良いと考えています。

 

100%確実な効果を期待できるケアは今のところ存在しません。

私がアドバイスすることはありますが、最後はやってみたときの選手の感覚を重視します。

 

鍼灸院でもアイシングに対するご質問を受けます。

その際も、アイシングをするように強制的なアドバイスをしたことはありません。

*急性外傷などで応急処置としてアイシングすることはあります。

 

しないならしないで良いのです。

何度も言っていることですが、選手個々に合った方法が最優先です。

 

また、急性外傷の応急処置以外の場面で通常のアイシングを投球後に行うのは「冷やしすぎ」だと考えています。

投球後のケアとしては、アイシングレベルまで冷やさず、冷水によるクーリングやその他のクールダウンやコンディショニングをミックスするケアが良いと考えています。

 

 

 

【累積疲労を最小限に】

投球傷害で一つ言えるのは「疲労をためないこと」が肩痛や肘痛の予防への重要な要因になるということです。

そんなのわかってる。

そう思うかたがほとんどだと思いますが、だからこそ疲労するのは仕方ないと諦めてしまっているケースもまた多いのです。

当たり前ですが、疲労がたまれば同じフォームもパフォーマンスも維持できませんし、怪我もしやすくなります。

疲労をためないことでパフォーマンスは向上しますし、疲労をためない動作を追求することは効率の良い投球につながります。

まぁ、効率と勝率は比例しないのでそこが勝負ごとでは問題なんですが。。。

 

疲労を蓄積しないための方法論は個人により様々でしょうが、疲労の蓄積は何一つ良いことがありませんからね。

スポーツを真剣にやれば疲労は必発します。

野球で言えば、どんなにフォームが綺麗な(と言われている)投手でも肩や肘の負担がないということはあり得ません。

フォームが良ければ怪我をしないとは言えませんし、フォームが良ければ相手に勝てるわけでもありません。

良いと言われているフォームも、数年後にはフォームへの考え方が変わっていることさえあります。

 

いつも最高のパフォーマンスができる選手は技術や精神力などの他に、自らの身体の状態を把握したり調整したりするコンディショニング能力にも長けています。

どうすれば疲労の出現を最小限に出来るのか。

どうすれば出た疲労を蓄積させないのか。

そして、どうすれば勝てるのか。

これを考えて実践していくのが大切です。

 

 

 

【自分なりの方法を】

野球に限らずスポーツをやるのは様々なシーンがありますし、楽しみ方も様々です。

プロとアマの違いもありますし、休日に試合だけ楽しむというのもスポーツの一つの在り方です。

 

共通するのは、

「上手くなりたい」

「勝ちたい」

「楽しみたい」

ということ。

 

野球をやるのは選手自身です。

自分の身体は自分にしか守れません。

最終的には試してみたことしか自分のものにはなりません。

情報に左右されるのではなく、実際に自分で試しながら自分にとっての最良の方法を見つけていくことが大切だと思います。